夫への手紙

結婚してから私はずーっと孤独と闘ってきました。
覚えていますか?新婚の頃。
全く知り合いのいない土地へ1人で来て、頼りになるのは夫であるあなた1人きり。でも、とても忙しい毎日で、ほとんど毎日のように帰りは遅く、休みの日も当直かゴルフ。たまに家にいても呼び出されて仕事へ。
でも仕事だから仕方ないと自分に言いきかせて、一度だって「淋しい」なんて口にしたことはなかったはずです。
毎日、ずーっと1人だから3時間くらいかけて夕食を作っても、夜遅くに帰ってきて疲れているあなたは、無言で10分位で食べ終わり、ササッとシャワーを浴びて寝てしまうような日々。ひとりポツンと残されて、泣きながら夕飯を食べたことが何度あったか・・・・。飲み会も多かったですよね。バブルの頃でしたから、夜遅くまで・・・。楽しそうに酔っぱらって帰ってくることも多く、その度に1人ぼっちで待っている私がいたことをわかってくれてはいませんでしたよね。実家が近ければ・・・、学生時代の友達が近くにいたなら・・・って何度思ったことでしょう・・・。でも、おつき合いも仕事だから・・・と、一度だって嫌な顔はしなかったはずです。
少しずつ、友達もできて、長男のYが産れてから・・・。もちろん淋しいことばかりではありませんでしたが、一番辛かったのは「オレは人の命を預かる仕事をしてるんだぞ!!」と言って、夜泣きがひどかったYを「どうにかしろ!」と言われた事です。抱っこしてれば泣き止むこともありましたが、抱いてもダメな時は、真夜中に寝まきのまま、Yを車に乗せて走り回り、ベビーシートのままそっと連れて帰ってくる・・・・・といった日々。何度泣き止まないYの口をふさいでしまおうと思ったことか・・・。何度抱いている手を離してしまおうと思ったことか・・・。苦しい毎日でしたが、助けてくれたのはあなたではありません。友達でした。
・・・でも転勤族でしたので、せっかく仲よくなってもすぐにお別れがきます。又、ゼロからやり直しです。
次の任地にももちろん1人も知り合いはいませんでした。今度はYもいるので私が輪を広げなければYにも友達はできません。一生懸命友達を作りましたよ。
いざという時に親身になって助けてくれる友達を・・・。私の具合いが悪いから、早く帰ってきてくれとか、保育園へ送って行ってくれとか一度も言ったことありませんよね?いつも友達が助けてくれていました。もちろん、私もできるだけ助けましたよ。中にはご主人が助けて下さる家庭もありましたが、あなたに言っても無理だとわかっていたので、一度だって頼んだことはないはずです。次男のFが生れてからはWさんにどれ程助けてもらったか・・・。
Fを産んだ後、子宮から大出血をした時のことを覚えていますか?どんどん出血し、布団は血だらけ、シャワーを浴びていても流れるように出血し病院へ連れて行ってくれと頼みましたが「この時間じゃ当直の先生に迷惑だから・・・」とあなたは拒否しました。母が、心配してました。貧血の為か、立っていられなくなり、目も開かず、耳もきこえなくなりかけた私を見て、泣きながらあなたに「病院へ連れて行って下さい!!」って懇願して、やっと連れて行ってくれたんですよね。淋しかったですよ・・・。

そして何と言っても「オレねぇ・・・。独立するんだ!」と言われた時の淋しさは言いようがありませんでした。2年間私にだまって準備を進めていたこと。私がどんなに泣いてわめいても気持ちは変わらないと言われた時の気持ち。あなたにわかりますか?
私は自営だけとは絶対に結婚はしたくありませんでした。だから初めてお見合いで会った日、私はしつこく聞いたんです。覚えていないでしょうが、あまりしつこく「独立はしないんですね?」と聞く私にあなたは「ボクは絶対に独立はしません!」と言ったのです。その言葉を信じて結婚をした私にとって、あまりに簡単に「独立するんだ!」と言われて、大きなショックでした。それも、「独立したいんだけど・・・・」という相談ではなくて、もう決心となっていましたよね・・・。その理由が「このままサラリーマンを続けて胃潰瘍から胃がんになって死んでもいいの?」とおどしのような理由。反対できる訳ありませんよ・・・。それに「何もやらなくていいから。一切手伝わなくていいから・・・。」と言う言葉と、岡山で独立したいと言った時の父の「孫と同居できるなんてこんな幸せなことはない!!」と嬉しそうな顔に心が動かされ泣く泣く賛成しましたが、今となってはそのどちらも反古にされてしまいましたね・・・。

その頃も、日よう日は一人で土地を見に行ったりゴルフだったりと、私は子ども達と楽しむことを見つけていました。たまには4人で出かけたりもしましたが、子どもよりも優先していたものがありましたよね。

その後も2回の引越し。私もYも上手に新しい友達を作るのに慣れて行きました。でも・・・想像以上に大変なんですよ。田舎は、生れも育ちも地元の人が多いので、その中へ単身のりこんで行くというのは・・・・。いつも淋しさとは隣りあわせでしたよ。そう簡単には仲良くなれるもんではありませんからね・・・。

今の土地に来てからは週末は毎日のように独立に向けてのあいさつ回りや雑用。幼い2人を家に残して飛び回っていましたよね・・・。よくグレずに良い子達でいてくたと思いますよ・・・。

最初の約束はどうなったのか・・・・自分で言うのも何ですが、私はとても良く手伝ったと思いますよ!!もちろん、今に至るまでずーっと。
「私はあなたの仕事を手伝ってるんだから、あなたも家事を手伝って!」と言ったら「死んでも嫌だ!」と言いましたよね・・・。本当に冷たい人です。
全く私の働きを認めていないあなたにとって、家事をするのは私の仕事。『おまえらを何不自由なく生活させてやっているのはオレ様なんだから感謝しろ!!』・・・と言うことですよね。・・・でも、何不自由なく・・というのは間違いですよ。

あなたが独立したことによって、私や子ども達にはほしくもない肩書きがついてしまったのですよ。
「◯◯さんの奥さん」「◯◯さんの息子」という、私にとっては一番キライな肩書きが!!これがどんなに辛いかあなたには絶対にわからないと思います!!まぁ・・・わかろうともしないでしょうけど。

先日、「おまえは湯水のように金を使いやがって!!」とおっしゃっていましたが、ブランド品を買う訳でなし、いったい私のどこが湯水のよう・・・なのですか?こんなに普通の私が「◯◯さんの奥さん」と言われて嬉しい訳がなく、スーパーへ行けばカゴの中身をチェックされ、興味津々で近づいてくる人もいる。本当の私を知ってもらう前に肩書きばかりがひとり歩きして勝手なイメージを作られる。昔からの友達がいる訳ではないので、様々な場で本当の私を出さない限り、誤解されたままになってしまう。私がそれに負けてとじ込もれば、子ども達も勝手なイメージで作られてしまう・・・と思えばこそ、敢えて役員も引き受けて全々お高くなく普通の主婦であることをわかってもらってきたのです。

それでも、イメージというのは怖いもので、今だに良く知らない人の間では、勝手な想像がふくらんでいる様です。
そんな中で生きていく辛さ、わかりますか?
それも自分が望んで手に入れた肩書きでなく、有無を言わさず押しつけられたものの為にどれだけ私達が苦しんでいるか!
Yは高1の春に大泣きして訴えてきましたよ。「◯◯の息子になんて生れたくなかった!!こんな家になんて住みたくなかった!!」って。中学3年間、彼は本当に辛かったんですよ!!自分に自信もないのに、肩書きばかり目立ってしまって。なのに父親にはいつも認めてもらえず、おこられてばかりいる・・・。でも反抗できない・・・・。私も全く同じ思いでした。あなたにはバカにされている。こんなに家業の仕事をしているのに認めてもらえず、家を片づけろとおこられてばかりいる。必要とされていない。
 そんな時、ボランティアで救われたんですよ。知的障害のある子達は、口でコミュニケーションを取らないかわりに心で人を判断できる。彼らには肩書きなんて全く関係ない。素の私。私の心を認めて必要としてくれる。こんな嬉しいことはありませんでした。

 彼らの笑顔は私の心を幸せにしてくれます。元気にしてくれます。

 何にでも自信満々でできないということはあり得ないようなあなたには、わからないでしょうが、普段、バカにされ、見下され、自分の気持ちを押えて生きていると、人に必要とされ、認めてもらえることがどんなに嬉しいことか!!

 いつも「おまえほど性格のひどい、意地の悪い女はいない!」と言われますが、あなたの前ではきっとそうなんでしょうね・・・。私は今まで友達にそんな風に言われたことはありませんでした。もっと本当の自分を出すことができるから。いつからでしょうか、あなたの前では本当の自分を出せません。いつも何を考えているかわからないので様子を伺ってしまうんです・・・。でも自分では、気を使っているだけで、意地悪などしているつもりはありません。むしろ、素直にいろいろ聞けないんです。

 あなたにはひどい人間だと思われていますが、障害のある子達には必要とされているんです。だから、彼らといると居心地が良いんです。だからきっと元気になれるんですね。

 ずーっと淋しかった私の心を救ってくれたボランティアやヘルパーがあるから、何とか家でもやって行けるんです。見下されても、罵倒されても・・・。
 今までさんざん放っておいたのに、ゴルフができなくなり、つき合いもなくなって休日に自分が家にいるようになったから今度は私が外へ出るのを嫌がるのはひどいです。今まで助けてくれなかったから、私は自分で救ってくれるものをさがしたんです。それを取り上げないで下さい。唯一、肩書きから解放されて、心のまま、お腹の底から笑える場所なんです。

 そこまで言うならやることをやってから行け!!と言うんでしょうが逆なんです。

 心が満たされていないと、そうじなんてできないんですよ。食事、洗濯と自営の仕事で精一杯なんです。
あたなに罵倒されればされる程、できなくなるんです。
 そんなのなまけているだけだって思うでしょ?そう思って、自分でも情けなくなりました。カウンセリングにも通って、自分が変わらなくちゃと思って努力もしています。頑張らなきゃ!って思いました。少しずつ頑張ってみましたが泣けてくるんです。何故だか涙が止まらなくなるんですよ。そうじをしないと認めてもらえない自分がなさけなくて・・・。

 そうじなんて下手でも私のことを好きだって言ってもらいたかったです。そうじができないなんて私なんてこの家にいる価値もないということですよね。

 条件付きでないと愛してはもらえない自分が悲しいです。無条件で愛してもらいたかったです。

 結婚する少し前、私は不安になりあなたに聞いたことがあります。覚えてはいませんよね。
「本当に私でいいの?」と・・・。そうしたらあなたは「何を今更バカなことを言ってんだよ!」と言ったんです。今更って何でしょう・・・・。もう結婚式も近いのに・・・ってことでしょうか?私はただ「私がいい」と言ってもらいたかっただけでした。自信がなかったんです。あまりに何でも完璧にできるあなたと私では・・・・不釣合いなのでは・・・・と思ったんです。その不安は解消されることなく、時々、忘れることはあっても、17年間ずーっとずーっと心の中にありました。
 「養ってもらってる分際で・・・・」とか、「おまえみたいな奴は・・・・」と言われる度に、その不安は顔を出し、きっと私なんかがあなたと結婚したのは間違いだったんだと思いました。

 きっと、あなたは後悔していることでしょう。私なんかと結婚したことを。

 とくに最近、無視し続けているのはその証拠ですよね。

 知っていますか?人の心を壊すのに一番効果的なイジメは無視することだそうです。その人の存在を無視するという訳ですから・・・。「死ね!」と口で言うよりも効果的なんだそうです。

 社会人にとって一番大切なことは挨拶だと思っています。家族であっても一番大切だとおもっていました。それを無視されるのは思った以上にキツイですね。まだ10日くらいですが、私の心はいつまで持つでしょうか・・・・。

 2月から、日ようびのボランティアは休んでいます。あなたの気嫌も悪くなるし、そうじもしていないから・・・・。だから心が満たされることも元気も出ることもないまま、壊れていくのでしょうか・・・。思ったよりも早いかもしれませんね。
 壊れるとどうなるのでしょうか・・・・?
前に他人の車にぶつけた時に「オレの名前は出すな!」と車から降りることさえしてくれず、電話で怒鳴るだけでしたあなたですから、私の心が壊れて何か事を起こしたりしたらどんなに怒るのでしょうか・・・?

一番大切なことを言い忘れていました。

ごめんなさい。こんなにひどい女だと最初からわかっていれば結婚なんてしなかったですね。
YやFにも私の悪い遺伝子が伝ってしまいました。でも、彼らには優しくしてあげて下さい。私は、彼らが生きているだけで幸せです。そう思ってあげて下さい。せめて親だけでも無条件で愛してあげないと、自信の持てない子になって苦しむだけです。

ありがとうございました。
結婚したての頃、あなたがとても気が長く、優しいと感じた時がありました。その時は本当に結婚して良かったって思いました。愚痴のような・・・いや愚痴ですよね。こんな文章ですみません。でも、楽しかったことや幸せだったことはここに書いたことより沢山あったように思えます。・・・でも悲しいですね。幸せだったことよりも辛かったことの方がとても良く覚えているんです。
泣いてばかりいた訳ではないのに、悲しかったことばかり思い出すんですよ・・・。
もう、心が壊れかけているのでしょうか?

 楽しかったこと・・・・ありましたよね、沢山!でも思い出せませんねぇ。

隣りにいても心は離れていましたよね。受け入れられていない・・・というか、閉ざされているような・・・。思い違いではないですよね。

 私は愛する人が笑って幸せそうな様子が一番嬉しいことでした。だから、あなたがやりたいと言う事ほしいという物、何でもOKでした。
 あなたは違いましたね。私のやりたい事、それは自分の思うところのやることをキチンとやってからやれ!自分が家にいる時は近くにいろ。
・・・・それは、愛ではなくただの束縛ですね。もしかしたら私に対しては愛などなかった・・・。そうかもしれないですね。自分の所有物のようなものでしょうか・・・。だから言うことをきくのは当り前。きかないなら怒る。気嫌が悪くなる。無視する。

「おはよう!」・・・無視、「いってらっしゃい」・・・無視。何で、こんなことされているのにお弁当作ったり洗濯したりしなくちゃならないのか・・・・。でも、ここで私まで口をきかなくなったら余計に悪い循環。気を取りなおして「おかえり!」・・・やっぱり無視。今日で3週間、いいかげんにおかしくなりそうですよ。

 こうゆう陰険な仕打ちはやめてくれませんか?せっかく喜ぶことをしてあげようと思っても気持ちがくじけてしまいます。
 そのくせ、レストランのジャズコンサートへ行きたいとかアンティークショップへつき合ってくれとか・・・・あなたの真意が全くわかりません。

 いろいろ考えると頭がおかしくなりそうです。もう、いいかげんにはっきり言ってくれませんか?「オマエなんて嫌いだから出て行け!!」と。こういう中途半端なイジメのような無視はされたことがないので・・・・思っていた以上にキツイですね。時々爆発しそうになります。

 本当は私は幸せなんでしょうね・・・・。
そう思えない私がおかしいんですよね・・・・。

 読み返す元気はありません。
あなたを責める為に書いたのでもありません。
ただ、今まで表に出さなかった・・・・出せなかった私の気持ちを書いただけです。

 心が壊れてしまったら、わからなくなってしまうから、書いておいただけです。

 あなたの真意を教えて下さい。
はっきりと言って下さい。返事を下さい。
お願いします。

最後まで長文を読んでいただきましてありがとうございました。
文章から推測されたと思いますが、心が病んでいる時期に書いた手紙です。
今思えばこの時期にこの思いを誰か同じ立場の人に話せていたら、
もっと早く楽になれたと思います。なぜなら夫がアスペルガーと分かった
今では、この手紙の中の夫の言動が全て理解できるのです。
自分だけが苦しくて被害者の様に感じていたけど、
本当は夫も同じ様に苦しんでいた事が分かったのです。
同じ当事者同士ならその気持ちが分かち合えると思います。
宜しかったら相談して下さい。

brilliant life アドバイザー ひろみ

対応方法を一緒に考えます。まずはご連絡ください。